台湾には、雇用主により組織された同業公会または工業同業公会が多数存在します。全国または地域で最も影響力がある商工団体組織は以下のとおりです。
工業総会は、経済発展の向上と推進を目指し、産業界の視点および意見を発信する場となっています。工業総会は非営利組織であり、各製造工業を代表する約150の同業会団体によって構成されています。各会員同業公会がそれぞれ特定の製造業の代表者であり、組織全体では8万を超える台湾会社を代表しており、労働法律の制定・改正および労働政策の策定すべてに多大な影響力を有しています。また、商業総会の主要な役割は、国内外の商業経営環境の改善のサポート、商会組織メンバー間の連絡の増進、民間企業の代表としての政府部門に対する法律草案の制定・改正への要請、政府の経済政策の遂行への支援および研究・提言、国際貿易の促進および他国との提携関係の構築、ならびに国外市場の動向を収集して関連情報を会員に提供することなどがあります。
主な在台外国商会(商工会議所)は以下の三つです
欧州商務協会は、台湾におけるヨーロッパ企業の利益を代表する主要機関です。ヨーロッパの関心事項が常に台湾政府の優先政策にあることを確保するため、政府への働きかけや立場声明の提示を行います。また、欧州商務協会と欧州委員会の密接な連携が、台湾のヨーロッパでの発言力を高めます。欧州商務協会は基本的にはビジネス指向ですが、ヨーロッパと台湾の文化・社会交流においても重要な役割を果たしています。
台北市米国商会は、米台間のビジネス・貿易発展、および地方政府(地方公共団体)のグローバルスタンダード化を促進しています。台北市米国商会は会員の共通利益を確保し、意見および情報交換の場を提供するほか、影響力が高く、かつ信頼できる政府への提言者として在台米国企業を支援し、台湾における地域活動への寄与を促しています。
台北市日本工商会は日台間の経済・貿易・投資関係を推進し、双方の経済・貿易交流において重要な役割を果たしています。また、会報や月報など出版物の発行を通じて、台湾の政治、経済と産業に関する情報を会員向けに発信するとともに、在台日本企業間の交流を促し、さらには投資と業務運営について、日本企業の代表として台湾政府に提言しています。
労働組合および労使関係は、投資者が考慮すべき将来の企業経営へ多大な影響を及ぼす要因となっています。台湾労働組合は「労働組合法」(中国語:「工會法」)に基づき設立され登録制となっています。その、組織類型は企業労働組合・職業労働組合・産業労働組合があり、労働組合は連合組織を形成しています。
2012年末に出された行政院の労使関係統計資料によると、台湾では合計976社が企業労働組合および産業労働組合に加入し、会員数は58.9万人あまりです。これらの労働組合の主要な機能は組合員を代表して、事業主と交渉し組合員の労動権益を守ることであるにもかかわらず、加入企業中、わずか83社の雇用主が労働組合と団体協約を締結しているだけです。このことからも台湾において、集団的労使交渉はまだ広まっていないことがわかります。一方、会員人数が比較的多い労働組合は、雇用主がいる労働者だけでなく、零細企業の労働者も含まれ、職業労働組合を形成しています。こちらは合計4,016社、会員数は279.9万人で、この労働組合の最も主要な機能は会員が各種の社会保障制度に加入することにあります。全体的には、台湾企業の労使関係は非常に安定していますが、正式な集団的労使交渉活動は活発ではありません。
労使協力の促進および労働効率の向上を図るため、「労働基準法」では、雇用従業員30人以上の事業は「労使会議」の設置が規定されています。これは企業内の労使共同協議制度(joint labor-management consultation system)であり、労使双方から選出されたそれぞれ同人数の代表により構成するものと規定しています。労使会議は、労使関係の調整・労使協力の促進・労働条件や従業員福利厚生計画および労働効率の向上などを含めた議題について討論します。2012年末において、合計38,436の事業において労使会議が開催されています。
一般的に、集団的労使交渉は団体協約による交渉および一般的非正式労使交渉に分けられています。前者については、「団体協約法」において双方当事者は、誠実性の原則をもって交渉を行う必要があると明文化されています。雇用主に交渉拒否の状況があった場合には、労働組合は中央労工行政主管機関が設置する「不当労働行為裁決委員会」に裁決を申請することができます。2011年5月1日に前述の「団体協約法」の新たな修正規定が施行されて以降、団体協約を締結した事業者数は、2010年末は43社でした。一年半の期間を経て、2012年末には83社に増加しました。将来、さらに継続して増加していくか否かは観察中です。
労働紛争の大半は賃金、労働契約、業務災害、退職に関する問題、労働者保険・福祉や管理に関する問題に分類できます。紛争案件の多くは権利争議であり、司法訴訟または行政機関による訴訟外紛争処理制度などが救済方法として挙げられます。紛争が最も多い業種は製造業、次いで卸売・小売業、その他サービス業および飲食・旅館業です。
解決件数から見てもわかるように、和解と調停手続が労使紛争の解決に有効な方法です。これまでの労使紛争は、使用者が退職金、解雇手当または賃金を法規定に従って支給していないことに起因するものが多く、政府はそのつど労働組合と使用者の両方から嘆願と抗議を受けていました。
年度/紛争種類 | 全案件数 | 関係者人数 | |||
---|---|---|---|---|---|
2002 | 14,017 | (9,392) | 105,714 | (97,436) | |
2003 | 12,204 | (6,892) | 28,821 | (20,815) | |
2004 | 10,838 | (5,827) | 32,478 | (25,932) | |
2005 | 14,256 | (8,173) | 85,544 | (77,642) | |
2006 | 14,262 | (8,903) | 80,144 | (73,316) | |
2007 | 19,729 | (10,188) | 121,563 | (109,242) | |
2008 | 24,540 | (11,074) | 65,274 | (48,182) | |
2009 | 30,385 | (15,104) | 68,649 | (48,954) | |
2010 | 23,865 | (11,565) | 42,934 | (28,367) | |
2011 | 22,629 | -11,767 | 44,022 | -30,941 | |
2012 | 23,223 | -11,248 | 41,255 | -26,347 | |
賃金 | 10,353 | -4,152 | |||
契約 | 1,544 | -1,014 | |||
解雇手当の支給 | 5,758 | -2,783 | |||
退職手当の支給 | 904 | -478 | |||
業務災害 | 1,693 | -1099 | |||
労働組合の身分保障 | 13 | -13 | |||
労働者保険支給 | 392 | -216 | |||
その他権利事項 | 2,430 | -1,374 | |||
調整事項 |
136 | 119 | |||
調整賃金 | 36 | -33 | |||
勤続年数の計算 | 2 | -1 | |||
労働時間の調整 | 61 | -61 | |||
その他調整事項 | 37 | -24 |
出所:勞動部勞勞動統計資料
備考:
‧()内の数字は中央政府の労働者事務主務官庁が介入した案件の数を示します。
‧1つの案件に2種類以上の紛争事項が関わっている可能性があります。
‧1つの案件に少なくとも2人以上の関係者が関わっている可能性があります。
詳しくは勞動部のサイトをご覧ください。