2023-08-30
2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、半導体への需要が急激に高まりました。世界の半導体生産能力がほぼ東アジア地域に集中しているうえ、感染拡大により人や物の流れが制限されたことから、半導体の供給が需要に追いつかず、「チップ不足」という言葉が形容するような情勢が生まれ、世界中の国々が半導体の重要性を認識することとなりました。世界の主要な半導体製造装置メーカーは、積極的に生産を拡大するとともに、半導体の生産大国である台湾や韓国をはじめ、シンガポール、マレーシアなどアジアでの投資や展開を強化、近場での供給実現可能性を高め、サプライチェーンの強靭性を向上させました。パンデミックの緩和と米中対立の激化が進むなか、大手メーカー各社は、中国が過去3年間において世界最大の半導体設備市場となっていることを踏まえ、収益への影響を低下させる対策として、続々とサプライチェーン展開戦略の調整を加速させています。
近年ではHPCや5G、そして自動車用電子製品などの新たな最終用途がもたらした半導体需要のほか、2019年末から始まった新型コロナウイルスの感染拡大が在宅勤務やオンライン授業の需要をもたらし、半導体の需要がさらに大きく増加、大手半導体メーカーの積極的な生産拡大につながりました。これにより、世界の半導体設備市場は3年連続プラス成長となり、2022年には1,076.5億米ドルと記録を更新しました。半導体設備の主要サプライヤーは米国、オランダ、日本に集中していますが、市場の約80%は東アジアにあり、2022年における世界全体でのシェア率を見ると、中国が26.3%、台湾が24.9%、韓国が20%、日本が7.8%をそれぞれ占めています。半導体設備の主要生産国のうち、顧客との距離が近く、生産工場を海外に設ける動機が弱い日本を除くと、米国企業のアプライド・マテリアルズ(AMAT)やラムリサーチ(Lam Research)、オランダ企業のASMLなど他の企業は皆、現地でのサービス提供を目的として、アジアに関連する生産拠点を設立しています。これらの生産拠点は、顧客に対して部品交換の迅速に提供できることと物流コストの削減を主要な目的としているため、組み立てが主であり、生産は一部でしか行われていません。
しかし、パンデミックの影響を経た後、各国は半導体を戦略物資の一つとしてとらえ、半導体の自給率強化を積極的に推進し始めました。特に米国は、半導体メーカーの米国への投資意欲を高め、自国の半導体産業の発展を促進するため、「CHIPSおよび科学法」(CHIPS and Science Act; CHIPS Act)の助成対象範囲拡大を先日発表、サプライチェーンの川上にある半導体設備や化学材料などの分野を追加しました。この発表は、半導体の戦略的資源であることの位置付けを象徴するのみならず、半導体産業がすでに世界経済と安全保障の生命線の一つとなっていることを体現しています。このような背景のもと、グローバルサプライチェーンのショートチェーン化という趨勢に対応するため、半導体設備メーカーもまた陸続と拠点配置の調整を加速しています。半導体設備業界は技術的にも資金的にも参入障壁が高いことから、長い間、ASML、ラムリサーチ、東京エレクトロンといった、数社の大手企業が主導してきました。以下は、上記の大手企業の対応策をまとめたものです。
台湾は半導体分野において優れた専門知識、高度な製造能力、完全な産業クラスターを擁しており、すでに世界の半導体産業発展の重要な拠点となっています。世界の半導体サプライチェーンが多くの課題に直面している中、国際的な半導体設備メーカーが相次いで台湾に進出し、製造・研究開発能力を構築しています。と同時に台湾の製造能力と結びつくことで、台湾の半導体産業エコシステムを強化し続けています。
資料來源: 財団法人金属工業研究発展センター 金属情報網